波間の夢 1



どうしてこの人はこんなに酷い事ばかり言うんだろう。
もう、もうっ!
「あなたなんて、大っ嫌い!!」

自分の声に驚き、ビクリと身体が震える。
暗闇の中に浮かぶのは薄く汚れた、見慣れた天井。
夢だったんだ・・

顔を見れば条件反射のように、あの人に食ってかかってばかりいたあの頃の夢。
キツイ言い方で私を責めた夢の中の彼が、目を覚ました今は恋しくてならない。
速水さん、速水さん、速水さん・・・。
いくら呼んでも私の声は届かない。

結婚を間近に控えたあの人には。

「速水さん・・」
一筋の涙と共に漏れ出た言葉に、私はハッと口を紡ぐ。
隣で寝ている麗を起こしてしまう。
ただでさえ不安定な私を心配してくれているのだから、これ以上迷惑はかけられない。

私は静かに目を瞑る。
今眠ったら、またあの夢へと誘われるのだろうか。
何も知らずに私は速水さんへ暴言を吐いていた。

胸が痛むのは夢の中でさえ繰り返される自分自身の愚かさを悔やむから?
それとも例え夢の中でもあの人の姿を見れる喜びから?

その狂おしいほどの痛みを抱えつつ、私はまどろみの海へと再び飲み込まれていく・・・


<Fin>




web拍手での連載です。

何をしていても、眠っているときでさえも速水さんの影から逃れられないマヤちゃん。
ずっと自分の気持ちを否定して、でもそれを受け入れざるを得なくなった後の怒涛のような
想いの洪水・・彼女には溺れずに押寄せる波を泳ぎきって欲しいものです。