パプワな人々 4






紫織・速水・マヤ・黒沼



「真澄様・・私の大切な婚約者・・・
あなたはいつも仕事が忙しいからと私になかなか会ってはくださらない。
せめてお電話をと思っても、今はあいにく立て込んでいますからとそっけなく切ってしまわれる・・。

でも紫織は知っているんですのよ、真澄様。
あなたがとても照れ屋さんでいらっしゃることを。
ふふっ、私、そんなあなたに気兼ねなく連絡を取れる良い方法を思いつきましたの。

それがこれ、携帯電話のメールですわ。
真澄様は私がメールを打つなんて思ってもみないことでしょう。
確かに以前の私はこういうものには興味もなく、使い方もわかりませんでしたわ。
でも桜小路とかいう俳優と連絡を取り合うようになってからは、すっかり操作も慣れましたもの。
今こそ真澄様に私の愛のメッセージをお送りするときですわ!

あの方のアドレスもデート中に席を外されたときに、鞄の中に入っていた携帯電話をお借りして
チェック済み。
ふふ・・私からメールが届いたら驚かれるでしょうね、真澄様。

文面ももう決まってますのよ。
いつだったか、見知らぬ方から送られてきたメールを参考にさせていただくつもりですの。
そうそう、これですわ」


ピッ!


『はじめましてv ユイです。
アナタだけに、こっそりステキな情報教えちゃうね(^。^)
これってマルチじゃないよー!
今、メールを送るだけで、どんどんマネーとお友達を増やせるんだけど、やり方はチョー簡単♪』


「ユイ様・・会ったこともない私にこんなに親切にしてくださって・・
どこのどなたか知りませんが感謝いたしますわ。
・・ではこのハートウォーミングな文章を少し変えて・・と、これでいいかしら」


『こんにちは、真澄様。あなたの紫織です。
最愛のあなただけに、内緒で素敵な情報をお知らせいたしますわ(^。^)
これは本当のことですのよ。
今、判を押すだけで、どんどん資産と傘下の企業を増やせるんですけど、やり方はとても簡単です
の♪』


「完璧ですわ! これで真澄様はすぐにでも私と結婚したくなるはず!
それでは行きますわよー、送信v」



ポチッ





 


ティロリロリン♪



「おや?」

「どうしたんですか、速水さん?」

「いや、携帯にメールが入ったらしい。ちょっと待っていてくれ、ちびちゃん。
一体誰からだ・・水城君か?」


『差出人:鷹宮紫織 件名:愛しい真澄様へ』


ポチッ(削除っっっ!!!!!!!!)


「速水さん、大事な用件じゃなかったんですか?」

「いや・・っ、たいした相手じゃなかったんだ。さしずめボトルキャップのようなものだな」

「うわぁ、回収もされないんですね!」

「まぁ、そんなところだ。それよりもちびちゃん、さっきの話だが・・」



ティロリロリン♪

ティロリロリン♪

ティロリロリン♪



「速水さん、やっぱり急ぎの用なんじゃないですか? 確認してみた方がいいですよ」

「ああ・・(嫌な予感はするが・・)」


『差出人:鷹宮紫織 件名:真澄様、お読みになりました?』
『差出人:鷹宮紫織 件名:お返事お待ちしております』
『差出人:鷹宮紫織 件名:あなたの魂の片割れより愛をこめて』



「・・・ちびちゃん、どうも部屋の空気が悪いようだな。窓を開けていいか」

「え・・あ、はいどうぞ」



カツカツカツ・・・

ガラッ

ガンガンガンッッ・・ヒューーーッ・・・カシャーーンッッ



「ほら、いい風が入るぞ、ちびちゃん」

「速水さん、なんだか窓の方で何かを叩きつけるような音がしたんですけど」

「ああ、うっかりと携帯を落としてしまってね。
この速水真澄ともあろう者が恥ずかしい限りだな。はっはっは」






「黒沼先生、庭を掃除していたら、激しく破壊された携帯電話が落ちてきたんですが」

「おいおい、なんだそりゃ」

「落ちてきた窓の方向を見たら速水社長がいらしたので、おそらくは社長の私物かと」

「困るな・・燃えないゴミは捨てるにしても費用がかさむんだ。
若旦那にはしっかり持ち帰るように言っておけ」



<Fin>



今回は2部構成です(・・という程のモノなのかはともかく)
紫織さんはパプワのアラシヤマというキャラの性格がそのまま反映されていて、その元キャラに
愛があるためかなり楽しく書くことができました。
でもこういう人に好かれると災難なので、適当に流すことが賢明でしょうねー。
相手が惚れ込んでいる分、上手に扱えば利用価値もあるのでしょうけど・・・さて速水さんにそれが
できるのでしょうか?