パプワな人々 3
英介・聖・速水
「聖、いるのか」
「はい、御前」
「真澄はどうしている」
「北島マヤと接触するために、紅天女の稽古を行っているスタジオを訪れていらっしゃいます」
「そうか・・紅天女の上演はわしの長い間の夢だった。
後継者が決まった今、あやつには一刻も早く上演権を手に入れてもらわねばならん」
「御前は紅天女に心酔なさっておられますから」
「もちろんだ、聖。『紅天女を手にした者は演劇界をも制する』・・・とこの本に書いてあるからな」
「それは月影千草が女優引退後に発行した自叙伝ですね」
「そうだ!しかも初版だぞ、聖!!わしはこの本に出会ったときには衝撃が走った。
紅天女と著者月影千草の数奇な運命。
緻密な分析で紅天女の謎に迫る月影千草。
巻末フロクの月影千草の駄洒落コーナーも実に秀逸!
これで上・中・下巻、五千四百円は実にお得!!」
「巻末余計ですね」
「この本に書かれた紅天女の素晴らしさを常々語ってきたというのに、真澄の奴め!
未だに上演権の一つも手に入れられんとは!!」
「それは御前も同じでは」
「とにかく!これ以上もたついていてはわしの沽券に係わるっ!!」
「御前、少し落ち着いてください。真澄様も慎重に策を練っておられるはずです」
「おお、すまんな聖。わしとしたことが・・
そうだな、演劇コンクールの地区予選で「劇団つきかげ」が一位になった瞬間の千草の笑顔でも
見て、心を落ち着かせるとしよう」
「これは御前がお撮りになったビデオですか」
「ああ、秘書に仕事を押し付けて見に行ったものだ。この同点一位で悔しがっている小野寺君の
姿がまた滑稽でね」
「一秘書に仕事を押し付けて、それをビデオで撮っているあなたも滑稽ですが」
「ふぅ、癒されたな・・。これしきのことで頭に血がのぼるとは・・この速水英介ともあろうものが。
聖、真澄には本腰を入れて大都での上演権獲得にあたるように改めて言っておけ」
「かしこまりました」
「上演権とマヤ様自身と・・真澄様にとってどちらの獲得の方が難しいのでしょうか」
「お前はどちらだと思う、聖」
「それは真澄様のお心次第でしょう。私はこの件に関してはあなたの指示に従い、紫のバラを手配
するだけに留めておきます。ですが、マヤ様が真澄様に好意を抱いているように思えるのは・・
私の気のせいでしょうか?」
「何を言っているんだ、聖。バカなことを。あのちびちゃんが俺を好きになることなどあるはずがない。
ましてや頬を赤らめたり、嫉妬してみたり、思わせぶりに梅の枝を贈ってみたり・・・
そんなことがあるわけないんだ」
「さて恋愛成就に反抗期な上司は放っておいて、ライバル会社の汚職調査にでも行くとしますか」
「おい、聖、何の話だっ!聖っっ!
・・全く・・もういなくなるとは、せっかちな奴だな・・」
<Fin>
紫織さんネタを拾おうとして「PAPUWA」を読み直していたら、あるキャラのシーンが英介さんと
重なって、どうしても書かずにはいられませんでした。
聖さんが速水会長をどのように呼ぶのかは分かりませんが「会長」ではないだろうし、「英介様」も
何となく違和感があるし、ましてや「ご隠居」はなかろうと思い、「御前」にしてみました。
本当のトコロはどうなのでしょう・・。
聖さんは真澄さん寄りですが、ツッコミは忘れません♪
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