初めての鼓動 1



「速水さん、何か初めてのことをする時ってドキドキしませんか?」
いきなり何を言い出すんだ、この子は。
速水さんはそんな目で私を見てる。

「ああ、今度の舞台の話か。君でも緊張することがあるのか?」
「そりゃぁ緊張・・はしますよ。少しは」
「くっくっくっ・・そうだな。『少し』はするな。
何しろ次の舞台の劇場は日本でも1、2を争うキャパだからな、主演女優さん」
「なんだかバカにしてません?速水さん」
「とんでもない。余裕のある発言に企画を担った芸能社の社長としては頼もしい限りですよ」
「もう!」
いつものからかう調子に、いつもの膨れっ面をしてみせる。

別に舞台の話じゃなかったんだけどな・・。
喫茶店の窓越しに外を見ると、様々な形のイルミネーションが光り輝いている。
トナカイやサンタさんにお星様。
きらきらと瞬くオブジェがこれでもかとばかりにクリスマスを演出している。
去年までは麗やつきかげの皆と一緒にケーキやご馳走を食べていたんだっけ。

・・だからね、こうやって「二人」で過ごすクリスマスなんて私初めてなんですよ、速水サン。

そして初めて買ったあなたへの贈り物。
どういう風に言って渡そうか。
ドキドキしながらタイミングを計っている私の気持ちなんて、全然わかってないんだから。


<Fin>



WEB拍手のお礼小説だったのですが季節物を統一しようと思い、クリスマスページに移動。
いつも長編ばかりを書いていたので、短い話はこれが初めてでした。

マヤちゃんの独白形式ですが彼女は言葉を飾らなくていいので、自然体で書けますv