初めての鼓動 2



何が飛び出すか分からないびっくり箱。
マヤとの会話は常にそんなイメージだ。
いきなり出てきたかと思うといろいろな方向へとバネが跳ね、勢いよく広がりを見せる。
だが、時にその方向は思いがけなく核心を突いてくることがあるから、侮れない。

「速水さん、何か初めてのことをする時ってドキドキしませんか?」

突然の言葉に身体が強張り、目の前の彼女を凝視する。
なぜなら今の俺は正にその状態と言えるからだ。
先程からどうやって切り出すべきかとタイミングを計りかねている。
何しろ生まれて初めてのことであり、最初で最後のことなのだから。
無論、マヤにとっても2度目などあり得ない。
俺がそうはさせない。

それにしても彼女に俺の気持ちを見抜かれたのだろうか?
こんな風に促されて話を出すのも抵抗がある。
とりあえず違う話題を振ってみよう。
焦る心を隠すために、いつものからかいを含ませて。


少しふてくされてプイッと窓の方へと顔を向けた彼女。
そんな仕草さえもが堪らなく愛しい。

手の中にあるのは、マヤの全てを俺のものにするための約束の証だ。
君の左手の薬指。
そこへ納まる予定のリングを、誓いを込めて俺は贈ろう。


大切な君と初めて過ごす、このクリスマスの夜に。


<Fin>



速水さんとマヤちゃん。
お互いに微妙にズレているものの、やっていることは一緒です。
相手に対して鈍感で、なのに想う気持ちは見事に重なっていて・・。
そういう意味では似た者同士なのでしょうか。