心の寄り辺 〜プロローグ〜





男にとって眠りは「安らぎ」ではなかった。
精密な機械に例えられる彼には、睡眠は生体を維持する行為に他ならず
己れに課されたスケジュールを円滑に進めるための手段に過ぎなかったのである。


しかし、今の彼は「安らぎ」を手に入れていた。
手に入れているはずであった。


長い睫に守られた瞳は閉じたまま、白い布団の上を細くしなやかな指が彷徨う。
何かを求め探るように動くそれは、僅かに焦りさえも感じさせた。
そして行き着く、暖かな温もり。


そして彼は安堵する。

これが夢ではないことを。
何年もの間思い描いていた、美しい幻のような夢の続きではないことを・・・



<Fin>




「波間の夢」の続編です。
しっとりと切なく終わらせるつもりが・・いつの間にか続きを考えていました。
私はどうもハッピーエンド思考になってしまうようです。

幸せの一部分を切り取った、そんな出だしです。
ここに至るまでが問題ですね(;^_^A