心の寄り辺 3



「あの子のことが気になりますか?」
いきなり背後から声をかけられた。

誰だ?

訝しみつつ、振り向いた俺に真っ直ぐな視線を投げかけているのは
マヤの昔からの芝居仲間だった。


「お久しぶりです、速水社長。青木です」
「ああ、君か。・・何の用だ?」
あまり見られたくない場所で話しかけられたせいか、応対も冷たいものになる。

「マヤのことが気になりますか、とお聞きしたんですよ」
そんな俺の態度に臆することなく、彼女は繰り返した。


何が言いたいんだ
挑発的な物言いをする目の前の女。
その言葉の意味するところは?

「気にならないと言えば嘘になるな。大事な紅天女候補だ」
「あなたの瞳に映っているのは『紅天女候補』ではないでしょう?」

無遠慮に畳み掛けてくる女に俺は苛立ちを感じる。

「つまらない憶測で話をするのはやめたまえ。俺も暇ではないのでな。
これで失礼するよ」
「暇でないのなら、不必要にあの子の前に現れるような真似はやめてください。
ただでさえ、今のあの子は不安定なんだ」

「不安定?」
車のドアにかけようとした手が止まる。

「なぜだ?長年の夢だった紅天女を演じるチャンスなんだ。
気が充実しているというならともかく、不安定などということがあるわけがない」

「恋を・・しているんですよ。叶う見込みのない、ね」皮肉気に青木は答えた。

・・・恋だと?あの子が?
一体誰に・・!?

「まさか・・」
「本当にまさかと思うんですか?」
青木がまるで責めるかのように、言葉を繰り出す。

「ずっとあの子を見つめ続けたあなたが、それに気づかないと?」
「・・!」

「あの子が誰を想っているのか、本当に分からないと言うんですかっ!?」

強い怒りの感情と共に放たれた言葉が扉を叩く。
永遠に閉じられているはずだった心の奥底の扉。
無意識に否定し続けてきたそれが開くのを

俺は・・阻止することができなかった。



<Fin>





なんだかトゲトゲ速水さんです。
確かにあまり見られたくはないですよねー、好きな女をただ見つめている自分の姿なんて(^_^.)

動かない彼に業を煮やして、麗がけしかけました。
・・実際、分かってないとは思えないんですよね。
単に思考をそこから逸らしているだけで。