心の寄り辺 6



いつでもそうだった。
俺の心の中に住んでいるのはマヤ、君一人。
誰も君には代えられない。
君以上のものなど何もないんだ。

そして心の奥底で気づいていた、君の俺に向ける視線の変化。

それを自覚した今となっては、愛しいと、離したくないというこの気持ちを
俺はもう抑えることができなかった。



「私達は二つに分かれた陰と陽だ。
共に一つの命、一つの魂・・・」

俺の腕の中で身じろぎ一つしないでいたマヤが、聞きなれた言葉に反応し顔を上げる。
そう、これは阿古夜に向けた一真のセリフ。


「速水さん・・?」

戸惑うマヤの瞳に俺の姿が取り込まれる。


「俺はいつも逃げてばかりいた。
正面から向き合うことを恐れていたんだ。
君にも、そして俺自身にも。
だが、もうそれはやめることにしたよ」

マヤに語りかけながら、不思議なほどに澄んでいく自分の心に気づく。
「速水真澄」という男を飾らずに、心のままに君に伝えよう。


「マヤ、俺は君を愛している」


彼女の瞳の中の俺が、あふれ出す透明な波で揺らめいた。


「嘘・・。
だって・・だって、紫織さん!紫織さんは?
結婚はどうするんですか?」

予想通りの反応だ。
自分を優先することのできない、あまりにもマヤらしい言葉。


「俺は会社のための結婚をするつもりだった。
紫織さんは素晴らしい人だが、愛情を向けることはできない。
俺の心は・・いつも君に行き着くのだから」

マヤの身体にカタカタと震えが走る。
動揺する彼女の視線を捕らえるために、胸元にある顎に手をかけた。

「君は・・そんな結婚が正しいと思うか?」

俺の言葉にマヤはハッとしたように息を飲んだ。
惑う瞳はそのままに。

「マヤ、俺が聞きたいのは君の気持ちだ。
返事を聞かせてくれ。」


彼女の頬にあてた俺の指に、真っ直ぐな線を描いて
熱い一滴が落ちた。



<Fin>



速水さん、飾り気も何もない告白です。
朴念仁だよなぁ・・・と思いつつ、追い詰められた人間はそんな言葉を選ぶ余裕もないかもと
思ってみたり。